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2022.05.10:火曜日

 
 

 
 
 飛騨高山にアトリエと住居があり、自然の中で作品を制作し、健やかな暮らしをされている越智香住さんが一年に一度この季節に、東京青山の下界に降りて参ります!
 ずいぶん以前にギャラリーで作品のご紹介をさせて頂いていた頃の横尾忠則氏にUFOの発見の仕方等を教えて頂いていた時分、ご自身を天界の人間とおっしゃる無邪気な氏を思い出しましたが、ピュアな越智さんは正に、山の上の方角に住む天界の人!
 そんな越智さんも人間ですから普通の人と同じく社会を無視して生きられるわけではなく「風の時代」と言われているこの時代、心地よい風が流れている筈が、何故か自由を阻まれかねない空気の気配の感じられる昨今です。
 そして越智さんのような方にこそ、そんなことには影響されずに、自由に感じたままに創作の道を突き進んで頂きたいですし、また最低限現状のままの社会が存続されることを願っています。
 清澄な空気の山での暮らしの中からでしか生まれない、純度の高い越智香住さんの作品の霊妙なエネルギーに、私たちは捕まえられることを望んでいるのかも知れません。
 それら作品たちは、西洋の彫塑の様式やアジアの仏像の顔の表情の特色を取り入れながら、現代の我々の時代の空気を纏わせて、常に新しいスタイルの彫塑作品として提示がなされ、回を重ねるごとに来廊の方々が増えております。
 作品からは越智さんの祈りのエネルギー、時には隠れた怒りや呪術的なエッセンスを含んだ越智さんのパワーが美術表現を通して、様々な人々の心に柔らかく時には強烈に染み渡って行くのを感じております。
 更には、創造性という心の中の大切な部分を、今はすっかり忘れてしまっているジャンルの人々(例えば政治家とか)にさえも人間元来の原初的な大きな柔らかな何かを気付かせ得るような、そんな希望を抱かせて頂ける越智さんの作品です。
 
 

 
 
http://spaceyui.com/schedule/ochi_kasumi2022.html

2022.04.27:水曜日

 
 

 
 
小山春子さんの作品展「daily wonder」、人々に清潔な穏やかな印象を残して終了致しました。
刺繍という、古来からずっと連なる手仕事のリズムを通した表現形態からは、独特のあじわいが生まれるように思います。
通常の平面作品を描くために絵の具を上手くあやつるのも大変ですが、刺繍での微妙なニュアンスを込めた表現は独自の技術が必要とされるに違いなく、作品制作に当たってはご苦労される事も多いのでは、と想像致します。
清涼な気配漂わせる作品や楽しげなポップな作品、また精神の深みを感じられる作品等、多様な表情を見せて下さる小山さんの作品世界でしたが、それらの作品たちは何か新たな更なる可能性のエネルギーを孕んでいる様に感じました。
小山さんに、作品につきましてのコメントを頂きましたので、ご紹介させて頂きます。
 

 
今作品展では下駄の鼻緒なども制作したため、今までよりも
多彩な生地に刺繍をしましたが大変楽しかったです。
 
また、漢字を使った作品も多く作ってみました。
専門的に学んだわけではないのですが、古い時代の漢字は形が
絵に近くおおらかで魅力的です。
 
刺繍も古き良きリズムを感じさせる質感なので、相性が良い
のではないかと思っています。
これからも扱っていきたいモチーフです。
 
作品を作る上で、テーマというほど意識しているわけではない
のですが、毎回ちょっとした意外性を作品に取り込めたら面白
いなと思って制作しています。
 
日常のささやかな意外性は、たとえば少し辛い時でも、ふっと
心を動かして楽しい気分にしてくれたりする要素の一つなので
は…と思うので。
 
展示タイトルの「daily wonder」もそんなイメージでした。
 
今回の展示が皆様の心を少しでも楽しくすることができていた
ら幸いです。
 
最後になりましたが
会場やSNSで作品展をご高覧いただいた皆様、お忙しい中
誠にありがとうございました。
 
またスペースユイの皆様、いつも居心地がよくて心温まる空間
をありがとうございます。
 
この場をお借りしまして心より御礼申し上げます。
そして今後ともどうぞよろしくお願い致します。
 
あとどうしても付け加えたいことが。
 
戦争は嫌です!
ウクライナの人たちに1日も早く平和を返して!
(誰に言ってるんでしょうか・・・)
 
小山春子
 
 

 
 
http://spaceyui.com/schedule/koyama_haruko2022.html

2022.04.17:日曜日

 
 

 
 
時代の風がどんどんシビアになっている季節に、民野さんの作品展が近づいて民野さんにお会いできる、と思うと、ひとすじの清涼な風を心待ちにしていた感覚をおぼえます。
作品と作家の精神はリンクしているのは当然ですが、民野さんの作品から流れ出してくる涼しげな同時に温かなエネルギーは本当に大切なものと感じております。
この地球上で起きている知らぬ間に始まっていた疫病の流通とか謀略から生まれた戦争が取り巻く空気感は、これまでの意識のままでは理解することのできないもどかしさがあって、私たちの心は灰色の靄で覆われてしまいました。
いろいろなことが起こって、様々な解釈の元で考え行動しておりますが、はっきりとした答えは出してはいけない雰囲気が蔓延しています。
民野さんは、30年間も毎年個展開催を続けて下さっていて、感覚的なことから地上で起こっているたいへんな事柄についてもほとんど感じ方が通じるため、そしてそんな風に物事を捉える人間はひじょうに少数派のため、勝手に連帯感を持たせて頂き、ブログではつい私感も書いてしまいます。
さて、今年は民野さんの30回目の個展でしたが、今回も作品に新しい風を感じました。
時間がタイトにぎゅっと詰まっていて面白い感じ・・。
懐かしさを感じる古き良き時代と現在の新しい息吹との両方の空気感をはらんだ魅力ある作風を生み出されておりました。
実は昨年末にスキーで左腕を骨折してしまった民野さん!左手が固定されていて動かせないため、絵の具のチューブを右手だけで開けなくてはなりません。毎回左足の指と右手で絵の具を出すのが大変だったため、絵の具をチューブから出す回数が減ったりその代わりに一度に絞り出す絵の具の分量が増えたりしながら、画風が変わって行ったのだそうです。まさに災い転じて・・・の例え通りですね!
そうしたお話を聞き、改めて作品を拝見しますと、最近描かれることの多い北海道の山々や大きく広がった空も、花や果物などの生物画からも、視覚を通じて北の地方の涼しげな心地よい風を感じさせて頂くと共に、時間の流れや民野さんご自身の物語を感じ取ることができました。
来年の民野さんの作品、終わったばかりですが、本当に楽しみです。
 
 

 
 
http://spaceyui.com/schedule/tamino_hiroyuki2022.html

2022.04.06:水曜日

 

高橋春夫
 
 
シンプルさを追求している全ての表現方法に於いて言えることと思いますが、只シンプルなだけですと面白味のないものになってしまします。
余分なものを削り取っていって、美しいものを創り上げていくという作業は、本当にたいへんな事と思います。理屈では表し得ない何かを込めてそれも削り取りながらの作業なのですから余計に・・・・。
高橋春夫さんの陶芸の作品にはいつもシンプルな美というものを感じます。
以前ギャラリーで、清潔感の極地といった感のあるお二人のイラストレーターの作品展が続けてありました。たいへん人気のある全くの他人であるお二人でしたが、その会期中に共通した「しつこい程の爽やかさ」というものを感じ、今でも強く記憶に残っているのです。
爽やかさやシンプルさを追求し表現するには、逆説的にある種のしつこさが重要なのかも知れません。
陶芸というジャンルは、日常に用いる器をデザインするプロダクトデザイナーとも重なりますが、高橋さんの作品からは、それらとは微妙に異なる感触の優しさや自由の息吹や可能性と言ったものが伝わって来るのです。
 
 

山田ミヤ
 
 
高橋春夫さんと山田ミヤさんの作品展、不思議な2人展ですねと色々な方から言われますが、何故かとてもすんなりとバランスが取れて二度目の開催です。
今回の山田さんの版画作品は、銅版画の他に紙版画も出品されて新鮮な興趣を呼び起こされました。
柔らかく春の訪れを感じさせる紙版画の画面からは、色彩とテクスチュアと多少の滲んだ感覚で、見る者の視覚に優しく訴えかけて来るようでした。
山田ミヤさんには、高橋春夫さんの作品展は壁面も真っ白、台に展示する作品も真っ白なので、作品同士が互いが引き立て合うような感覚の方をと、壁面への作品の展示をお願い致しました。
今回はお二人の展示は二度目ですが、皆様にも喜んで受け入れて頂いている様子が、企画したサイドとしてもたいへん嬉しく思います。
山田さんは、控えめな表現活動をされておりますが、展示の度に素敵な作品を見せて下さり、目を見張る思いが致します。
 
 
http://spaceyui.com/exhibition/takahashi_yamada2022.html

2022.03.26:土曜日

 
 

 
 
この個展開催の直前に、原因不明の心不全の発作の為、緊急搬送され救命措置を受け、生死の境をさまよわれ、無事生還された星野さん!
本当にたいへんな経験をされたのにそんな事少しも感じさせない展覧会でした。見事に乗り越えられて現在はリハビリをしながらお元気に何事もなかったように過ごされております!
そんな星野哲朗さんでしたが、作品のエネルギーの濃密さには誰もが驚かされました。ヨーロッパのどこかの国の建物を正面に見据え、綿密であったり、省略も入ったデザイン的処理を施したりと、緩急のメリハリをつけたテクスチュアを巧みに描いた魔法のようなテクニックを見せて下さいます。
建物だけではなく街の風景等を描いた画面内には、星野さんが描かれたモチーフがパワフルに満載されていて圧倒されます。空に浮かぶ雲も星野さんの独特な迫力ある色合いです。
星野さんの絵の構築的に組み立てられた画風からは、知的な作業の結果生み出されたもの、という事を思わずにはいられず、周到な図面が背景にあるような作品は誰にでもできるものではありません。
また、透明なガラスや小鳥を描いても魅力的。小さな画面におさめられたワイングラスもショットグラスもオリーブオイルの瓶も私たちの生活の中に自然と参加する様です。
感覚的なものが、先にインスピレーションとして感じ創作を始めるタイプの人にとっては、(またそういったタイプのかたが大多数と思われますが、)全く逆の発想かも知れませんが、星野さんが、もし一方の感覚的発想をするタイプの人だったら・・・・という感じを掬い取り、そのインスピレーションを星野さんの潜在的な能力に組み入れてこなしてしまう事等というとんでもない事ができたなら、新たな星野作品が生まれるのではないかという期待と言いますか妄想でしょうか、想像がとまりません!
その根底には優しさを湛えて豊かな才能で活動を続けられる星野哲朗さん、エネルギーを要するお仕事ぶりですが、ずっとお元気に素晴らしい作品を描き続けて頂きたいです。
 

 
 
http://spaceyui.com/schedule/hoshino-tetsuro_22.html

2022.03.24:木曜日

 
 

 
 
堂前守人さんの作品は奇をてらっている訳ではないのに、誰にも似ていなくて、面白いです!
そして毎年作風の中に、新しい顔を覗かせて下さり、楽しませて頂いております。
画廊では、いつも飄々と風のようにさりげない感じでいらっしゃいますが、お話しするととても楽しい方です。
毎年この季節になると、何事もなかったように函館からの堂前さんの展示が開催されますが、コロナ禍になってからすでに3度目を迎えました。いつも来年こそは穏やかになっています様にとお話ししますが、本当に来年はマスクなしで堂前さんの個展を迎えたいです!
堂前さんの素敵な旅のコメントが届けられました。ぜひご覧下さい。
 

 
実家が能登にあるので、年に何回も函館から車で走ります。間に津軽海峡があるので必ず海を渡らなくてはなりません。
小樽まで戻って日本海を新潟までフェリーで行くか、青森までフェリーで渡ってひたすら東北を走り続けるか。穏やかな夏には日本海を行くフェリーを利用します。途中いくつかある島々を眺めながらのんびりと日本海を行くのも快適です。
でも最近は東北から北陸まで遠回りしても今まで走ったことのない道を走るのがマイブームです。日本海側を海を見ながら走ったり、内陸を青森、秋田、山形、福島、新潟、富山、石川と寄り道しながら走ります。
ここで暮らすのは大変だろうなと思う山奥や鉱山跡、宿場町や豪農の家、峠やダム。季節ごとに変わる風景、その土地土地の食べ物、温泉。ずっと昔から続いている長い長い時間を感じられるのが東北の大きな魅力です。
走ったことのない道はまだまだ多い。
 
 

 
 
http://spaceyui.com/schedule/domae_2022.html

2022.03.13:日曜日

 
 

 
 
 竹井千佳さんの作品と作家自身のアイコンとして、生命力に満ちた永遠性を纏う若い女性像がイメージされます。
 女の子の可愛らしさとある種の醒めた視線、無垢な狡猾ささえ内包したイラストレーション作品は、瑞々しさを振りまきながらご本人の存在感と共に作品に触れる人々に鮮やかな印象を残すのではないかと思います。
 実際の竹井さんは狡猾さどころか、眼差しはクールなままに善良すぎるくらいにピュアな性格なのではと感じております。
 竹井さんご自身の、現実世界では中々見当たらない、少女漫画や小説の主人公に匹敵するような得難く明るいユニークな個性は、大きな存在感を持ち人々の中で浮かび上がります。
 人間性を素早く見抜く鋭さと、懐の深い許容量との振り幅の大きさが竹井さんの魅力となり作品として生まれているのだと思います。
 この上は社会を蔓延する誰もが影響されてしまうような同調圧力さえも吹き飛ばすほどの人の悪さを得て、また、その善良さ故に全てを許容することから自分を傷つけることのない様、我が儘さとか自分勝手さに目を向けられることも、竹井さんの作品の本質を大きく広げることに繋がるのでは、という感覚を覚えます。
 竹井千佳さんのキュートなキャラクター的存在感はそのままに、更に大きく進化のエネルギーを潜在的に内包するプリマドンナのように堂々と、揺るぎない作品を創出し続けていただきたいです。
 竹井さんのストイックな忍耐を要する技術に裏打ちされた美しい作品からは、そんな確かな力が想起されるのです。
 
 

 
 
http://spaceyui.com/schedule/chikatakei_2022.html

2022.03.02:水曜日

 
 

 
 
「山田博之 個展 Waterfall 2」は2019年の「Waterfall」に続き、瀧をテーマに会場を全て瀧の作品で埋め尽くした圧巻の展覧会でした。
 山田さんは昨年2021年の個展ではサボテンを描かれ、ギャラリー内は色々な種類のサボテンが展示されましたが、2019年の瀧に続き、2020年は波のチューブをテーマにと、動きのあるダイナミックな「水」をテーマにした個展が続きました。
 そして今年の展示「Waterfall 2」では、会場はマイナスイオン溢れる気持ちの良い空間となり、それらの雄大な景観からは水飛沫の音が聞こえて来る様でした。
 山田さんの「水」の世界観にリンクする様に、当ギャラリーでは一昨年の夏にオープンした奥会津水力館の中のギャラリーに山田さんの作品も展示依頼させて頂きました。
12名ほどの作家さんの中のお一人として水力発電施設と川との絵を描いて頂きましたが、こちらも完璧に水の世界ですから、数年間にわたる山田さんの主題とぴったりですし、流石に素晴らしい作品なのです。
 皆様にぜひその作品もご覧になって頂きたく、今回ご紹介させて頂きます。そして、建築物とそれを取り巻くうっとりする様な自然環境、建物内のインテリア空間もご覧頂きたいと思います。
 東北電力奥会津水力館は秘境といってもよい場所で、辿り着くまでに相当な努力がいるのですが、いざ到着すると驚く程景色の良い立地にあり、その景観も感じる気配も桃源郷のような場所です。機会がありましたら皆様も山田さんの作品をご覧になりにぜひお出かけ下さい。
 他の11名の方の作品も素敵な事は、もちろんです!
 
 

 
 
http://spaceyui.com/schedule/hiroyukiyamada_2022.htmlギャラリーhp
 
 
https://okuaizu-suiryokukan.jp/about/
東北電力奥会津水力館hp
 
 

 
 

2022.02.18:金曜日

 
 

 
 
谷口広樹氏の追悼展を振り返りまして、失った存在の大きさに改めて残念な思いにかられております。
お出かけ頂きました皆様と谷口氏との間に、交流の中で育まれた温かな思いが感じ取れました。そしてお客様のお話から自然と滲み出る谷口広樹氏の全ての人々に対しての思いやりの深さにも感じ入りました。
意義のある仕事を多く残され、また教える立場としても重要な役割を果たされて来られた谷口氏の存在感は、生徒さん達にとって悲しいけれど大きく大切なものとして心に留まり続ける事と思っております。

貴重な膨大な分量の足跡を残された谷口広樹氏の急逝に際し、当ギャラリーでの展示ではとても全容をご紹介できるものではありませんが、ご生前親交の深かったアーティストの方々のご協力を得てささやかではありますが思いのこもった追悼展を無事に開催することができたと存じております。

谷口氏の追悼展に関しましては当画廊だけでなく、引き続き以下のギャラリーにて開催の予定がございますので、ぜひお出かけ下さいませ。
3/28〜4/9    コバヤシ画廊
5/4〜5/8      代官山ヒルサイドテラスエキシビションルーム
                  
尚、2018年1月の北見隆さんとの二人展の際に作った小さなシルクスクリーンのおみくじの売り上げ金をご生前に素晴らしい仏画を描かれた神谷町の光明寺に奉納させて頂きます。
また、今回の追悼展では、出品者の方々の文章を作品と共に展示させて頂きましたので、以下にご紹介させて頂きます。
 

 
・伊藤桂司
岡倉天心記念館の前を少し過ぎた辺りで、谷口くんとバッタリ会った。谷中のギャラリーで開催されていた津々井良くんの個展最終日に向かう途中でのことだ。谷口くんは観終わった後だったが、半ば強引に「もう一回観ない?」と会場に連れ戻す。フォークロアとヨーロッパの日常風景が入り混じったような魅力的な作品を二人で楽しんだ。津々井くんも交えて3人で話すなんて、一体何年ぶりのことだったろう。観覧後は、近くのカフェで他愛もない冗談を交わし、ともに参加することになっている北海道のプロジェクトのことや音楽の話をした。カフェを出て日暮里の駅まで歩く。乗る電車は反対方向。ホームではいつものように手を振って別れた。2021年7月12日月曜日の夕方。それが谷口くんと会った最後だった。
 
・越智香住
小さい出会い 谷口広樹さんとの初めての出会いは3年前 (2019年) のスペースユイでの新年企画『一陽来福』展に出品依頼を受け、北見隆さん、谷口広樹さんお二人とご一緒させていただいた時です。顔合わせの日、谷口さんはお仕事が忙しく挨拶だけの刹那的なものでした。二度目は昨年の4月のスペースユイでの私の個展にご来廊いただき、親しくお話ししていただいて、拙作「あわせて」が気になる作品と言っていただいたのが耳に残っています。この追悼展は谷口広樹さんと私の三度目の出会いなのだと思います。心からご冥福をお祈り致します。
 
・北見隆
谷口さんは純度の高い大きな抽象画も描けば、デジタルによる気が遠くなるほど細かい、商業イラストも手掛けられていた。その上後進の指導にも手腕を発揮されており、その振り幅の大きさから「谷口さんが何処を目指しているのか僕には解らない」と、ご本人に申し上げたことがあるのだが、氏は笑っていた。谷口さんの作品タイトルはいつも凝っている。それは人生訓のようであったり、心情吐露のようであったりもする。谷口さんが亡くなった時に開催中の個展の中に「山はたくさんあるけれど頂上はたったひとつだけ」といったタイトルの作品があった。私はこのタイトルを見たとき、谷口さんが目指す方向性の謎が解けた気がした。谷口さんはその溢れる創作エネルギーに突き動かされ、眼前に高い山が現れると踏破せずにはいられなかったのではないだろうか。今回の突然の出来事はある意味、登山家の遭難事故だったのかもしれない。そう考えれば大いなる才能の喪失に、私も諦めが付く気がする。
 
・黒田愛里
昨年の夏に私は個展がありました。その会期中に谷口先生がなんと2回も来てくださり、忙しい先生に2回も個展を見てもらえた事がとても嬉しかったのを覚えています。(先生も同ギャラリーで個展を控えていたので打ち合わせもあったのですが)個展の度に何と言われるか毎回ドキドキで、先生に感想を伺うと今までにないくらい褒めてくださって、それが本当に嬉しくてまた頑張ろうと思えました。その日、私が先生と会えた最後でした。「自分を大切に、裏切らず精進すること」悩んでいたとき先生に言われた言葉です。先生には何度も何度も背中を押してもらった気がします。谷口先生の本「homosapiensaru’s wisdom」からも大切な教えを沢山いただきました。1つ1つの言葉が優しく、ときに愛をもって厳しく、先生の声で語りかけてくるこの本が私は大好きです。今回の作品はこの本の中の言葉からイメージを膨らませて描かせていただきました。一番大きな作品「わけへだて の ない あい を  もって」というタイトルも、zine「homosapiensaru’s wisdom」の中の言葉からです。
 
・津々井良
「さるとき」   
 たかいいしで    にちじょうを    ぐちょくに    ちせいの    ひかりで   
 ろかし   きおくにかえた
 
「夜のほとり」   
 谷口が最後に褒めてくれた作品     
 名前を呼び捨てで言える学生時代に出会った   
 初めて絵を見た時、凄い奴がいると実感した   
 二人でシルクの作品を作った   
 個展のDMから本のデザインから   
 頼めば忙しいのにホイホイとやってくれた   
 そしていつもエナジーをくれてた   
 あ  り  が  と  う
 
「月下に眠る」   
 あぁ、90まで100まで   生きて描くからと   低い声で断言してたのに   
 8月の月下の眠り   しばしの別れ    芒格札の庭で   又逢おう
 
・フジイカクホ
「マルフーとヒラフー」
学生時代、私はコンペで結果を残すことに固執して作品の方向性を失っていた時期がありました。そんな時に声をかけてくださった谷口先生の言葉がとても心に残っています。「今のお前の作品ではチョイスもひとつぼ展(1wall)もTISも通らない。しかし、賞を取った先にお前の求めているものがあるのか?お前はお前と作品を必要としてくれる場所に行け。コンペは自分にあったものがある。」この言葉をいただいてからは必要としてくれるところで作品を制作していけるように進み始めました。無理にコンペに出すことはやめ、仕事に繋げるべく売り込みを続けました。少しずつ仕事も増えてきた頃、イラストノート誌上のコンペ「ノート展 キャラクター部門」の募集が目に止まり、コンペの実績もそろそろほしいと思っていたので応募してみたところ準大賞を受賞。先生の言う通りになりました。「マルフーとヒラフー」はその時初めて賞をいただいた思い出深い作品です。
 
「粘土ミニチュア5mmシリーズ」
学生時代には自分の表現への追求で自分らしさを見失っていた時期もありました。当時の私は個性を履き違えており、表面上のことばかりを考えていたのです。ある時、私はクジラをモチーフにした作品を制作しましたが、様々な要素を盛り込んだクジラは面影がほとんどなくなってしまっていました。それを見た谷口先生から、「クジラといえば尾びれと潮吹きだろう。そこはきちんと表現しなければならない。」と、ご指導いただき、イラストレーションとして表現する際に欠かせないものがあることに気づかされました。近年は「粘土ミニチュア5mmシリーズ」として、約5mmサイズで動物をはじめ様々なものを制作しています。大きさの制約があるので要素の取捨選択をしながら進めるわけですが、デフォルメを追求する際には今もこの時のことが頭に浮かびます。まだまだ失敗することもありますが、先生の教えを胸に精進してまいりたいと思います。
 
・藤本巧
かわいい物が大好きな谷口先生は、よく僕が描くキャラクターに興味を示してくれました。マカロニ星人を描いた時には「これはゴーヤ?」「マカロニです。」とか、ひよこのポーチを描いた時には「これかわいい!口からティッシュとか出るの?」「口は開かないです。頭の上が開きます。」なんて会話が楽しくて、先生に絵を観てもらうことが好きでした。何度も相談して構図や色を決めたり、完成した絵を講評してもらい、また次の絵を描くということをひたすら繰り返していました。今思い返すとこの上なく贅沢な時間でした。僕が顔彩を使い始めたのも、画材に迷っている時に先生が目の前で顔彩を使って描いているのを見たことがきっかけでした。僕の絵には先生の教えが存分に詰まっています。この器の絵は先生のことを考えながら描きました。先生が観たらなんて言ってくれるでしょうか。あの時のように「巧は巧みだね~。」って笑いながら褒めてくれるでしょうか。
 
 

 
 
http://spaceyui.com/schedule/taniguchi_hiroki2022.html

2022.02.10:木曜日

 
 

 
 
今回、ある意味やっと舟橋全二氏のシルクスクリーン作品の展示が実現できたな〜、という感慨があります。
以前から、ギャラリーでは様々なテーマでの舟橋氏の作品展を開催して参りました。
舟橋氏と言えば、フジタ工業のポスターやアーバンデザインの一環としてのモニュメント作品等の評価が定着しておりますが、ギャラリーの個展では何度も金属の板を成形して形作る小さなモニュメントのようなオブジェ作品の展示が続きました。
金属の作品では、氏の切り絵の平面作品のような文字通りエッジの効いた作品のアウトラインと鮮やかなポップな色彩が特徴です。
小さなオブジェたちは、色彩が目を洗うようにフレッシュな印象を心に残すパワーがありましたが、やはり舟橋氏の本懐であるような気がする平面作品の展示をいつか開催したいという希望が本年に実現したのでした。
・・・・と、ここまで述べて来て、舟橋氏が金属のオブジェにこだわられてきたのか急に気がついてしまいました。まるでシルクスクリーン作品の中から抜け出たようなオブジェたちは飾るだけでなく、掌の中で愛でる事もフックに掛けて遊ぶ事もできてしまう!そして何よりも光を放つように色彩のエネルギーを放ちます。
オブジェもシルクスクリーンの平面作品も観る身にクリーンな目の覚めるような気持ち良さを与えて下さるのは同じなのかも知れません。
舟橋全二氏の作品は、2015年3月にエルミタージュ美術館の”POST PAST EXHIBITION”という250周年の記念展示に出品オファーがあり、そのまま美術館の永久保存となった作品が8点ほどあります。同時期に、横尾忠則氏等のポスターも展示されました。
今回の展示でも、フジタ工業、MESSE FRANKFURTのポスター等、エルミタージュに保存されている作品も展示させて頂きました。
舟橋氏のポスターやシルクスクリーン版画に託された心豊かな表現は、誰にも真似のできない作品として普遍的価値のあるものと思っております。
舟橋氏には、イラストレーションを教える教師という側面もあります。自由な魂を以って表現の大切さを伝えられた生徒さんたちは皆それぞれの個性をおおらかに広げて活躍されており、舟橋先生の素晴らしさを体現されています。
 
 

 
 
http://spaceyui.com/schedule/zenji_funabashi2022.html

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