南伸坊×伊野孝行「ぼくらの好きな画家」
「ぼくらの好きな画家」南伸坊x伊野孝行、待望の二人展でした。何しろ絵が大好きなお二人による書籍「いい絵だな」からの今回の企画展。ユニークな衒いのない絵画批評は、率直で腑に落ちる事の多い対話集です。時代を遡り、また様々な国の画家の作品の紹介とお二人の語り口からは、絵画鑑賞の楽しさがずっしりと伝わります!書籍と連動した今展覧会も見応えたっぷりでした!

南伸坊
1947年 東京生まれ。イラストレーター、エッセイスト。 著書に『のんき図画』『ねこはい 』『ねこはいに 』(青林工藝舎)文庫版『ねこはい』(角川文庫)『笑う子規』(筑摩書房)『笑う漱石』(七つ森書館)『仙人の桃』(中央公論新社)近日刊行など、著書多数。
伊野孝行
イラストレーター。1971年、三重県生まれ。東洋大学卒業。セツ・モードセミナー研究科卒業。講談社出版文化賞、高橋五山賞、グッド・デザイン賞。著書に『となりの一休さん』(春陽堂書店)、『画家の肖像』(ハモニカブックス)、『ゴッホ』(書肆 絵と本)など。TV番組にEテレ「オトナの一休さん」「昔話法廷」など。
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【南伸坊さんへQ&A】
Q. 一番大切にしていることは?
A. 「おもしろいこと」「笑えること」が一番大切だと思ってるんですが、これはつまり「発見する」ことだったんだな、と最近思います。何事か、今までは考えてもいなかったことを思いつく、それが「おもしろい」ということだし「笑える」ことらしい。そして実は、言葉にこそできていなかったけど、既に考えていたのだな、と気付いた時とてもうれしい。
Q. 作品のアイデアはどんな時に生まれるか?
A. 作品のアイデアは作品を作ろうとしないと生まれないです。私の場合。作品を依頼されて、何かどんなに下らないことでもいいから「笑えること」を思いつく。思いついた事を、自分で笑えて、いつまでも飽きがこないか、いつまでも「笑え」てるか?判断をして、いつまでも「笑えている」と思えたらそのアイデアで作品を作ります。
Q. 13才の時の夢は、今に繋がっているか?
A. 13才の頃には、特に考えだの夢だのは持っていなかったような気がします。私がものごころついたのは、15才くらいだったのではないでしょうか。和田誠さんに出会い、水木しげるさんに出会い、羽仁進さんに出会い、北杜夫さんに出会いました。今から思うと、貸本漫画で、ガロで描くようになる前の、つげ義春さんに出会ったのも15才の頃でした。
Q. 想像力を一番掻き立てるものは?
A. 他人の作った作物だと思います。見たり読んだり聞いたりして、おもしろかったり、感心したりすることが、一番想像力を掻き立てると思います。ダイレクトに体験したこと、例えば自然と対峙していて、何事か感じるようなことのできる人もいるでしょうが私はそういう才能がない。誰かの作ったもの、に掻き立てられていると思います。
Q. どんな朝食が好きですか?
A. ツマの朝食が好きです。ごはんがあって、味噌汁があって、おしんこがあって、サラダがあったり、納豆があったり、カボチャんの煮ものがあったり、塩鮭があったり、アジの干物だったり、里芋の煮っがしがあったり、ほうれんそうのおひたたしがあったり、昨夜の残りのすき焼きとかカレーとかがあったりする、ふつうの朝食。

【伊野孝行さんへ Q&A】
Q.作品のアイデアは、どんな時にどの様に生れますか?
A. アイデアはわりとすぐに思いつきます。例えば個展をするときは、最初に全部の絵のアイデアを考えたら、あとはそれを絵にしていくだけです。でも、絵を実際に描き始めると、頭で考えていたのと違う着地の仕方をすることがあります。描写や色はそれ自体が生き物のようで、手の中におさまらず飛び出しちゃったんですね。思い通りにならなかった部分には、自分が考えてなかったアイデアが含まれている気がします。
Q. ご自分が一番大切にしていることを何でも!
A. あきらめが肝心ですよね。あきらめてから道が開ける。
Q. 好きな食べ物や料理についてお話しされたいことがあればお話し下さい。
A. 去年、ハンドブレンダーなる調理器具を買って、やたらと野菜のポタージュを飲んでいます。中でも20回くらい作ったのはネギのポタージュ。長ネギの白い部分だけをバターで炒めて、コンソメ、水、牛乳、白胡椒を加えるだけなのですが、驚くほどに甘い。そして驚くことに食べさせた人が誰もネギだとわからない。
Q. リフレッシュ(=気分転換)をするためのオリジナルな方法はありますか?
A. 家から歩いて5分の映画館「下高井戸シネマ」に行って、スマホの電源を切り、2時間近く映画館の暗闇に身を置くことが、一番気分転換になりますね。私の面白い映画の条件は、退屈せずに最後まで観れたらいいというもの。でも、展開の多い脚本が必ずしも面白いわけではないし、逆にほとんど何も起こらないのに退屈しない映画もあります。
Q.13歳の時の夢は、今に繋がっていますか?。
A. 13歳のとき、近所の商業施設に吉本興業の芸人さんたちがやってきたことがあります(確かオール阪神巨人や、月亭八方などが来てたと思う)。実はそのちょっと前から芸人という仕事に憧れを持ち始めていたのですが、本物の芸人をこの目で見て満足したのか、その晩、布団に入った時「芸人になんて向いてるわけないやん」と夢を自分でかき消しました。

