山﨑杉夫+信濃八太郎 二人展「僕の町、僕の場所2」

信濃ハ太郎さん、山崎杉夫さんの二人展「僕の町、僕の場所2」が開催中です。3年ぶりの充実の展覧会です!安西水丸さんの生徒さんだったお二人には水丸さんに関してのお話もお聞きしました。まずは信濃さん、そして山崎さん、とご紹介させて頂きます。

信濃八太郎(しなのはったろう)1974年生まれ
日本大学芸術学部演劇学科舞台装置コース卒業。重要文化財自由学園明日館勤務を経て、現在ペーターズショップ&ギャラリー勤務。パレットクラブスクール、コム・イラストレーターズ・スタジオ受講。 雑誌、書籍、広告などのほか、舞台美術やアニメーション作品の制作も行っています。
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Q. 作品を通して、人々にどの様なメッセージを伝えたいですか?
A.
伝えたいメッセージということはとくに考えていないのですが、同じ時代を歩いている者同士、これで良いのかな、良いよね、いや良くないか、と一緒に考えながら進んでいけたらと思ってまして、そのためのツールとして絵が役割を持ってくれれば…と思い描いてます。

Q. ぱっと閃くインスピレーションは、どんな時に生れますか?
A.
目的を持たずに(←ここが大事)散歩している時に出会った風景と、聴いてる音楽がぴたりと重なって気持ちが揺さぶられた時など。

Q. 好きな画家、イラストレーターは誰ですか?良ければその理由も。
A.
学生時代から憧れている、雑誌『The New Yorker』に絵を描かれてるすべてのイラストレーター、カートゥーン作家から影響を受けてます。表紙であっても小さなカットであっても、一枚の絵のなかに、描く人の思想があるところ。

Q. どんな小説を読まれますか?また、好きな小説家はいますか?良ければその理由も。
A.
本がないと出かけることも寝ることもできない雑多な乱読者で、自己啓発本やビジネス書以外は、なんでも読むという感じです。
いまは『十二月の十日』(ジョージ・ソーンダース著、岸本佐知子訳)、『春はまた巡る』(デイヴィッド・ホックニー著)、『高峰秀子ベストエッセイ』をぐるぐる読みつつ、いかついおっちゃん俳優ダニー・トレホのタコス本『TREJO’S TACOS』でよだれを垂らしています。

Q. 好きな音楽、ミュージシャンなどについてお話し下さい。良ければその理由も。
A.
バスキアやウォーホルに衝撃を受けた中学生の頃から、N.Y.C.から生まれる音楽にはいつも魅かれています。出たばかりのヨ・ラ・テンゴの『This Stupid World』を最近はよく聴いてます。フジロックにも来るので楽しみです。

Q. 印象的な映画、好きな俳優などについてお話し下さい。良ければその理由も。
A.
最近観たなかでは『あのこと』(オードレイ・ディヴァン監督)、『NOPE』(ジョーダン・ピール監督)、『リコリス・ピザ』(ポール・トーマス・アンダーソン監督)、『神々の山嶺』(パトリック・インバート監督)あたりがとても印象に残ってます。映画は「苦手だな」と思う作品にもなにかしらの気づきがあるので、狭量な自分の枠を二時間の間にすこしでも広げてくれるところが好きです。深く考えずにふらっと出かけて、選ばずに、たまたまやってた作品を観るようにしています。

Q. 好きな演劇、興味のある舞台芸術がありましたらお話し下さい。良ければその理由も。
A.
観てきたばかりで失礼しますが、シアターコクーン芸術監督の松尾スズキさんが総合演出を務める『シブヤデマタアイマショウ』に大爆笑でした。いつまでも工事が終わらない渋谷駅から出られない人々がゾンビのように現れたり、♪ 芸術監督になったのにコロナ禍になって公演中止〜、ようやく収まってきたと思ったら東急閉店、閉店、閉店〜 ♪ など、耳馴染みのあるミュージカルのリズムに合わせて、松尾さんの生活実感がそのまま、皆が共感できる表現に昇華されているところなど、笑って泣いて勉強にもなりました。

Q. あなたの作品の表現方法や画材、モチーフやモデルへのこだわりについて教えて下さい。
A.
「こだわり」という言葉がとても苦手です。描いている自分がとにかく楽しく気持ち良いと感じられる心の状態を維持できるよう、思考に絡め取られるよりも先に、とりあえずどんどん手を動かしているという感じでしょうか。

Q. ご自分が一番大切にしていることを何でも!
A.
安西水丸先生から教えていただいたことが、絵を描く上での指針となってまして、一言で言えないことを一言でいうなら「絵は人なり。」ということでしょうか。

Q. 生まれ変わったら就きたい職業は?
A.
床屋さん。いつももうお店を辞めて引退された80オーバーのおじいさんに、町の歴史などうかがいなら、無理を言って髪を切ってもらってるのですが「どれだけ世の中が不景気でも髪は伸びる」「私の仕事も信濃さんの仕事も、普段来てくれる人たちを大切にしていれば、なんとか続けていけるもんだよ」という金言をいただき胸に刻んでます。絵は好き嫌いがありますが、髪は切ったら全員がさっぱり気持ち良いという明快さも魅力的ですね。

Q. 安西水丸さんのお話の中で、一番印象に残っているのはどんな言葉でしょう?
A.
随分昔のことですが、ちょっと忙しくなった時に(生意気にも)仕事での悩みなど先生にお話したことがありました。その時にいただいた言葉。
「信濃、『愚痴』って言葉を辞書で引いたことある? 「言っても無駄なこと」って書いてあるよ。嫌なら辞めちゃえばいいじゃない。明日信濃がいなくなってもべつに誰も困らないよ」
雷に打たれ、仕事と向き合う態度そのものが変わりました。先生がいなくなってしまい、困られている方をたくさん見ております。精進してまいります。

Q. 水丸さんは、普段の仕事と一緒に若い方の育成にもたいへん力を入れていました。先生としての水丸氏は、どのような教えに力を入れられていましたか?
A.
自分が教わったこと以外にも、パレットクラブのスタッフとして教室の後ろから先生の授業をたくさん拝聴してきましたが、安西先生は自分の知るイラストレーターとしてのテクニックを教えるというよりも、生徒ひとりひとりの絵を見て、人をみて、瞬時にその人に足りないところを見つけ、必要な言葉をかけていました。1対1なんです。イラストレーターとしてというよりも、その人の考え方や態度が魅力的であれば、絵も自然とその人らしく形作られていく。そんな風に接してくださる先生は安西先生だけでした(あくまで個人的な感想ですが)。

Q. 水丸氏からの影響に興味があります。イラストレーターとして、また個人的な生き方としてなど・・・。
A.
飾らずに驕らずに、毎日とにかく楽しく絵を描く。そのために全力の努力をする(旅も映画もお酒もすべて努力)。なんだか遊ぶための言い訳みたいですが、本音です。

いつも、ゴミ捨て場から拾った巨大なスピーカーで音楽を鳴らしながら仕事しています。そんなエピソードを書かせていただきました。↓
https://www.1101.com/n/weeksdays/contents/46361

続いて山崎杉夫さんにたくさん伺いました。

山﨑杉夫(やまざきすぎお)1968年 東京生まれ
立教大学経済学部卒業後、会社員生活を経てセツ・モードセミナー卒。安西水丸氏に師事。装画、雑誌挿絵などを中心に活動。
2003年にザ・チョイス年度賞、TIS公募金賞。最近の仕事には「大好きな町に用がある」(角田光代/スチッチパブリッシング刊 )、「任侠学園」(今野敏/中央公論新社刊)の表紙絵がある。著書に絵本「黒猫ナイト」(長崎出版)、紙芝居「ばけねこやま」(教育画劇)。OPA GARALLY(神宮前)にて隔年で個展を開催しています。神奈川県鎌倉市在住。同人誌「四月と十月」同人。
https://www.sugioyamazaki.com/

Q. 作品を通して、人々にどの様なメッセージを伝えたいですか?
A.
絵を観た時にパッと気持ちに明るい光が差し込んで、潤おってもらえたら十分です。

Q. ぱっと閃くインスピレーションは、どんな時に生れますか?
A.
散歩やランニングなど一人で野外を動いている時が多いです。

Q. 好きな画家、イラストレーターは誰ですか?良ければその理由も。
A.
安西水丸、和田誠、灘本唯人、河村要助、エドワード・ホッパー、ディック・ブルーナ、ユトリロ、パブロ・ピカソ、ロイ・リキテンシュタインなど

Q. どんな小説を読まれますか?また、好きな小説家はいますか?良ければその理由も。
A.
「モンテ・クリスト伯」アレクサンドル・デュマ
主人公の紆余曲折は人生の教科書を読んでいるようで、自分に照らし合わせて何度でも読みたくなります。

Q. 好きな音楽、ミュージシャンなどについてお話し下さい。良ければその理由も。
A.
サザンオールスターズ:たまたま桑田佳祐さんが母校の卒業生と知ったことがきっかけで高校時代からファンです。それまではあのしゃがれた声は苦手だったのに。(人間なんてそんなものです。)
ウイントン・マルサリス:ある映画で知ってファンになりました。ライブを聴いて、そのトランペットの音色に魅了されました。

Q. 印象的な映画、好きな俳優などについてお話し下さい。良ければその理由も。
A.
ゴッドファーザー:好きな小説で取り上げた「モンテ・クリスト伯」同様、人生の教科書的な存在。何度見ても飽きないです。

Q. 好きな演劇、興味のある舞台芸術がありましたらお話し下さい。良ければその理由も。
A.
落語:セットも衣装もないけれど聴いているとどんどん頭の中に江戸の世界が広がって、そこに一人浸れる感じが好きです。

Q. あなたの作品の表現方法や画材、モチーフやモデルへのこだわりについて教えて下さい。
A.
紙は少し凹凸のあるマーメイド紙。絵の具は主にアクリルガッシュ。黒い輪郭線の部分は漫画墨汁や耐水性インクなどに置き換える場合もあります。他に切り絵の手法もあります。
良くも悪くも強い絵だと自覚しているので、色使いや構図には注意を払ってあまり刺々しくならず、普遍性と温もりのある絵を目指しています。
モチーフはできるだけ日常の中にある風景や物、人を自分なりの眼差しで見つけていくように心がけています。

Q. ご自分の作品と世界(社会)との繋がりについて、こだわりはありますか?
A.
絵には意識せずともその時々の自分が反映されていると考えているので、世の中や身の回りのことなど絵を描く以外のことにきちんと向き合って生きていくことが自分の絵を作っていくのではないかと思っています。

Q. リフレッシュ(=気分転換)をするためのオリジナルな方法はありますか?
A.
ランニング。外の景色を観ながら走っていると難しいことは全て忘れてスッキリします!

Q. 安西水丸さんのお話の中で、一番印象に残っているのはどんな言葉でしょう?
A.
「ゲストには上座に座ってもらえ」
これはイラストレーション教室の生徒時代、打ち上げの幹事をした際に会場に入ってきた水丸先生が真っ先に僕に言ったセリフです。
水丸先生のような売れっ子イラストレーターはそんな事は気にしないマイペースな存在ではないかと勝手に思い込んでいましたが、それは大きな誤解だったことをこの瞬間に気づかされました。
その後も折にふれ、水丸先生が人付き合いに大変丁寧で、どんな小さな約束事でも必ず守る場面を度々拝見して絵が魅力的なのはもちろんだけど、人間が魅力的だから長年第一線で活躍されているのだなと合点がいきました。

Q. 水丸さんは、普段の仕事と一緒に若い方の育成にもたいへん力を入れていました。先生としての水丸氏は、どのような教えに力を入れられていましたか?
A.
それぞれの個性を発見して、そこに確実に光を当ててくれました。こんな感じがいいんじゃないかなと次に進むべき方向へのヒントも与えてくれます。でも、そこまででした。向かうべきところに辿り着く具体的な方法は自分で考えなさいと。だから、いただいたヒントやきっかけを生かすも殺すもあとは自分の行動次第。そこは明確でしたし、その厳しさはイラストレーターとして本気でやっていきたいのかという覚悟を問われていたような気がします。
僕にとってはプロとしての心構えを教えてもらった道場の師範のような存在でした。

Q. 水丸氏からの影響に興味があります。イラストレーターとして、また個人的な生き方としてな ど・・・。
A.
一番影響を受けたのは正直に生きることです。
水丸先生は基本的にとても優しいし公平な人だった印象が強いです。どんな立場の人にでも態度は変わらないし、話していることも一貫しています。
自分を大きく見せることもなく、肩の力を抜いていつも自分の興味に素直に行動しているように見えました。でも、筋が通らないことがあると大いに怒っていました。(時々ですけど)

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